時と場所を超える世界の名作。「老人と海」ヘミングウェイ著。 世界文学の金字塔。(読んでおきたい名作)

 世界文学の金字塔、有名すぎる名作、ヘミングウェイの「老人と海」。
子供に、「おすすめの本、貸して」と言って、お勧めしてもらったのがこの本です。

「薄い本と、厚い本、どっちがいい?」と聞かれ、
私が「薄い本」を指定したら、この本になりました。(笑)

 おお若者よ、この本を選ぶのか!

内容的に、「生きる」ということを甘く見せない、人生の厳しさも垣間見える、なかなか大人な本なので、ちょっと意外でした。

 「老人と海」は、海釣りの知識や情景だけでなく、老人の心の内、内面の描写が細やかに書かれた名作です。
 物語の中に引き込まれる作品は数々ありますが、「老人と海」も、
通勤電車内で活字を追うと、
現実世界の中では、人の波の雑踏の中に紛れているのに、
私の頭の中は、遠く本の世界に引き込まれて、

少年と老人と一緒に、海から吹いてくる潮風の、湿った塩辛い空気を吸い、
仕掛けの網や釣り道具を選んで、
粗末な造りの家の中でベッドに入る老人を、間近で見ている錯覚に陥り、
意識が完全に現実にいる場所(電車)から飛んで、異国の海に行ってしまう。

 現実世界で職場のある駅に到着し、電車を降りてふと現実に戻ると、
そこが日本で、いつもの通勤の途中で、
本の中の世界に引き込まれていたことに気づく、という感じでした。

 この小説は、1952年9月アメリカの全国紙「ライフ」に全文掲載されるという異例の出版方法で発表され、48時間以内に売り切れ、センセーショナルなブームを巻き起こしたそうですが、
(「ノーベル文学賞とピューリッツァー賞をもたらしたベストセラーにして、世界文学の金字塔」と新潮文庫の帯に書かれていました。)

そこから70年ほどの時を経た今も、色あせることなく、
老人は老人のまま、少年は少年のまま、イキイキと、読み手の中で登場人物が動き、
作者の死後も、生きていたその時と全く同じように、
読者の脳の中に音声を介さず、直接語り掛ける。

本の中の時は全く止まらず、登場人物たちが、イキイキと動き続けている様子が、
冷静になると不思議で、名作の持つパワーに驚かされる感じでした。

 たまにテレビで、マグロの一本釣りの漁師に密着したドキュメント番組があって、
海の上でマグロと格闘する映像がドキュメンタリーとして放送されたりしますが、
「老人と海」も、老人と大魚の一騎打ちがあり、貧しさや老いもあって、
生きるとは、こういうことなのかもしれない、ぐらいの、生死を感じさせたり、
小説が、現実よりも現実らしく、リアルに感じられ、
その厳しさを感じさせたりするのですが、

いわゆるネタバレで、「こういう内容の話でした」という、
ストーリーがメインの小説ではなく、
むしろ、それを知ることなど、どうでもよく、

読んでいる人間に「生きること」を考えさせたり、
年を重ねること、人間の強さを、心にしっかり感じるような、
「小説の一文字一文字を、読んでいくことでしか伝わらない力強さ」をもった小説で、
ストーリーの内容を知ることではなく、
小説自体を読むことに本当に価値のある小説だと思いました。

納税額が日本一のお金持ち、大成功者の斎藤一人さんのお話の中に、
「参った、しないの」という話があり、
負けたって言わなければ、負けではない、だから、参ったって言わない(ほうがいい)、ということを聞いたことがあるのですが、

「人間は、負けるようにはできちゃいない」(小説の中の老人のセリフ)のかも。

 薄い本でもあり、誰もが?知る、時を経ても色あせない名作。
「世界文学の金字塔」の言葉も、ノーベル文学賞も、ピューリッツァー賞も、納得の一冊。

「ザ・名作」を読みたくなったら、一気の読める薄い本、
「老人と海」を選択するのも、いいと思います。


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